2016年1月18日月曜日

通俗解釈のマキァヴェッリと、実際のマキァヴェッリ

昨今はあまり集中して読書ができず、何冊か目を通してはいるものの読了しきっておらず、ブログの更新も途絶えていました。
本日twitterにてセンター試験の世界史の話題があったのですが、今回はマキァヴェッリに関連する設問があったため、問題の解答・解説にてマキァヴェッリに触れられていました。
そこで目の当たりにしたのが恒例の通俗的なマキァヴェッリに対する解釈で、仕方ないと思いつつも、そろそろより実際に近いと思われる姿が広まらないかなと、ややげんなりしつつ思ったのでした。

その後しばらくたってから、これまたtwitterにて誤情報の訂正に関する話題(こちら)をみかけました。誤情報を訂正するのも、やり方を工夫しないと逆効果になりかねないので、一工夫して情報を提供すべしとのことです。

紹介されていた効果的な誤情報の訂正方法にのっとった、マキァヴェッリの通俗解釈へのカウンターを簡単でもいいからまとめてみるのも面白いかなと思い、モチベーションがあるうちに手早く記事にしてみました。
専門的な知識があるわけではなく、また、知識の不足のみならず認識があやふやなところもあるかもしれませんが、ひとまず形にしてみようと思います。
内容に間違いや修正すべき点がありましたら、コメントやtwitterでぜひご指摘を。

なお、過去に世界史リブレット人の『マキァヴェッリ』の感想をまとめているのでそちらも参照していただければと思います。

先ほど言及した、誤情報のより効果的な訂正を引用しつつ、そこからマキァヴェッリにあうように文章を考えてみます。

効果的なデバンキング法
  • コアな事実:反論は事実を強調すべきで、誤情報を強調すべきでない。
  • 直接な警告:誤情報に言及る前に、文字もしくはビジュアルで、次に各情報が間違っていることを注意喚起すべきである。
  • 代わりとなる説明:デバンキングによってできた隙間を埋める必要がある。誤情報が間違っている理由についての、代わりとなる原因の説明や、さらには、そもそも誤情報の宣伝者が何故に宣伝しているのかを提示することで達成できる。
  • 図:コアな事実は可能ならグラフィカルに提示すべきである。

コアな事実:

「マキァヴェッリとは」
15世紀末から16世紀前半にかけて活躍した、フィレンツェ出身の人物。フィレンツェ共和国で官僚として政治・外交など多方面に活躍したが、政変により失職。失職後に有名な『君主論』『リウィウス論(ディスコルシ、政略論とも)』などを著す。
官僚時代はもちろん、失職後も政治に対する興味や関心が薄れない人生だったが、それ以外にも『マンドラーゴラ』などの喜劇の台本を著したり、私生活では冗談が多い愉快な手紙を書き残していたりと、多彩な一面をもっている。

「『君主論』とは」
君主がとるべき方策を簡潔かつ平明な文章で表現した、政策提言かつ君主処世訓。地盤が盤石であり、代々の王の政策を継承すれば良い世襲の君主と、地盤が脆弱で危地に陥りやすい新君主それぞれへの言及がある。おもな対象は新君主であるために、非常事態ではモラルにとらわれない非常の策をもちいるべしといった提言も多く、後世に「権謀術数を勧める悪徳の本」という誤解を招くもとにもなった。

直接な警告と代わりとなる説明:

「権謀術数という”誤解”」
権謀術数を勧め、著者本人も同様の手法を用いたあくどい人間であるという解釈がなされてきたが、本人はむしろ立ち回りが上手い方ではなく、政変の際にはあえなく失職。
失職後の就職活動もなかなか成功しなかった(もちろん本人の資質だけではなく、環境が悪かったという点は当然ある)。

「君主政を主張?」
『君主論』だけが飛び抜けて著名なために君主政の推奨者と思われがちであるが、共和政を強く指向した人物という解釈がマキァヴェッリの専門家の中でも有力。
実際、マキァヴェッリは「フィレンツェには共和政が適している」との提言を残してもいる。
政治思想の著作として、『君主論』ほどではないがあるていど知られている『リウィウス論』があるが、こちらではリウィウスのローマ史を中心に、共和政を論じている。

「イタリア統一を予見した愛国者?」
『君主論』は「イタリア統一」を熱望したとも読める文章で締められているため、後世に近代ナショナリズムにひきよせた解釈がなされることも多いが、近代的な価値観のバイアスで歪められた解釈であると考えられている。
マキァヴェッリにとっての「我が国」はフィレンツェ共和国であり、現代の統一イタリアを構想したとは考えにくい。「イタリア人の力を結集して外敵からの解放を」というメッセージは当時しばしば主張されており、外敵の追放・力の結集=ナショナリズムにもとづく近代国家ではない(例えば、イタリア半島に割拠していた複数の有力国家の連携・同盟による外敵の追放でもことは足りる)。


図でグラフィカルにというのは私にはセンスが無いので割愛します。
とりあえずざっくりとまとめてみましたが、果たしてこれがマキァヴェッリに関する誤解を解く一助となるかどうか。
甚だ微力とは思いますが、やらないよりはマシなはず(と思いたい)。

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