『妖神グルメ (The Cthulhu Mythos Files2)』
創土社 菊地秀行著
菊地秀行の小説の例に違わぬ異能主人公ものではあるのですが、その異能が氏の定番であるエロス&バイオレンス・アクションものとはひとあじ違い、イカモノ料理の才という何とも珍妙なスキルとなっています。
異色のクトゥルーものということで評判となっていたので読んでみたのですが、主人公の味付けは異なれども中身はやっぱり菊池風です。お色気要素に関しては相当に控えめなので、菊池作品のエロ描写に辟易とする方には読みやすい作品と思います。
私個人の感想で、否定的な物言いとなってしまって恐縮ですが、クトゥルーというネタとのマッチングはちょっと微妙なところがあるなと。旧支配者が多大な力を持っている描写があっても、料理と食事という舞台にセッティングされる時点でどうにも卑小な地点へ引きずり降ろされる感覚が。
一昔前の作品ゆえの、執筆当時の空気を感じ取れるという副次的な愉しみも味わえたし、気になる部分がありつつも総じていえば楽しんで読めたので良い気分転換になりました。
楽しめた……とはいうものの、同著者では他の作品の方がよりダイレクトに面白さを感じたのもまた事実でした。超常の敵に超常のスキルをもって直接的な戦いに挑む主人公というシンプルな構図の方が、私にはあっていたようです。
メフィストやDみたいな浮世離れした美貌の超越的なキャラもいいですが、念法の工藤明彦はイケメンではないのに存在感たっぷりで、異能はあれども地に足がついた安定感が特徴の、親しみやすい実に素晴らしいキャラクターでした。(とはいうものの、念法シリーズはエログロは強めなので、そちらには辟易しないでもありませんでしたが。)
0 件のコメント:
コメントを投稿